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マグリット ベルギーのシュルレアリスム巨匠を図版たっぷりでご紹介します

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ルネ・マグリット(1898~1967年)は、ベルギーのシュルレアリスムの代表的な画家です。

青い空と白い雲が唐突に脈絡なくカンバスに現れて鑑賞者を混乱させる。

そんな作品が代表的ですね。

 

ですが、マグリットの作品は空と雲だけではありません。

この記事では、青空と白雲以外の作品もご紹介しながら、マグリットの全体像が分かるように解説します

作品ももちろんですが、生涯もドラマティックで見逃せないポイントなので、しっかりお伝えしますね。

 

 

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作品8点をご紹介

 

まずは代表的な作品8点ご紹介します。

これだけでも、マグリットの多様性がお伝えできるかと思います。

 

1920年
ピエール・ブルジョワの肖像

 

1926年頃
プリムヴェール

 

1929年
イメージの裏切り(これはパイプではない)

 

1936年
透視

 

1945年
幸運

 

1943年
ストロピア

 

1956年
手前にかかる月

 

1963年
大家族

 

いかがでしょう。

これがマグリット?という意外な作品もあったのではありませんか?

では、解説に進みます。

 

 

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生涯概略

 

トラウマを作った幼少期

 

ルネ・マグリットは1898年にベルギーで生まれました。

マグリット家は父と母、2人の弟の5人家族。

長男ルネ・マグリットは、弟たちといたずらに明け暮れるやんちゃ坊主でした。

 

そんなマグリット家の人々にとって衝撃的な事件が起こります。

母・レジーナの自殺です。

1912年、精神的に不安定だったレジーナは、川に身を投げ自殺。

見つかった時には遺体はかなり損傷がひどく、顔は白い服で覆われていました。

 

この経験は、ルネ・マグリットにとって生涯記憶に残り、絵画にも影響を及ぼした大きな出来事でした。

 

 

ブリュッセルでの画業と運命の女

 

1915年、17歳で、マグリットはブリュッセルに移り画業に励むようになります。

印象派、キュビスムなどを学び、自らの画風を模索しました。

 

1920年
ピエール・ブルジョワの肖像

 

画学生として絵画を学んでいたマグリットに、またもや事件が起こります。

それが、運命の女性ジョルジェットとの再会です。

 

マグリットジョルジェットは、マグリットが14歳、ジョルジェットが12歳の時に、当時マグリットが住んでいたシャルルロワという街で初めて出会いました。

お祭りの賑やかさの中で一緒にメリーゴーランドに乗り、淡い想いを抱いたふたりでしたが、離れ離れになってしまいます。

それが偶然、ブリュッセルで出会ったのです。

1920年、マグリットが22歳、ジョルジェットが20歳の時のことでした。

 

これをきっかけに2年後には結婚し、生涯のパートナーとなりました。

 

 

お金になる「デザイン」、お金にならない「絵画」

 

画家マグリットを悩ませたのは、画家にとって宿命的な問題、生活費をどう稼ぐかでした。

 

マグリットは、お金を得るために商業的な広告デザインを数多く手がけました

 

1926年頃
プリムヴェール

 

1922年には壁紙工場でデザイナーとして仕事をしてもいます。

 

一方で、先端芸術に対する熱意も持ち続けました。

1926年、当時流行していたシュルレアリスムのグループがブリュッセルで組織された時、マグリットもこれに参加しています。

※ シュルレアリスムについては後ほど詳しく解説します

 

とはいえ、「画家」としてのマグリットはあまり評判がよくありませんでした

1927年、29歳の時、パリ郊外へ移り住みパリで活動を試みますが、それも失敗。

3年でブリュッセルに戻ります。

 

シュルレアリストとして大成できないマグリットは、シュルレアリスムながらも独自の道を探りはじめるのです。

 

 

世界大戦中も妻の傍にいたい

 

1936年、38歳にして、マグリットは初の個展をアメリカで開催します。

1938年にはロンドンで個展開催

徐々に世に認められてきました。

 

そんな最中、第二次世界大戦が勃発。

1940年にはドイツがベルギーに侵攻します。

 

ベルギーの画家たちは戦火を逃れようと、隣国フランスへ逃げ込みます。

マグリットも、一時は逃げました。

しかし3か月でブリュッセルに戻ってきてしまいます

 

理由は、愛する妻ジョルジェットが、病のため疎開できずにブリュッセルにいたから

食料すら十分でなかったブリュッセルで、マグリットたちは不自由ながらも一緒に暮らすことを選びました。

 

 

誰が何と言おうと、今はとにかく明るい絵画を!

 

戦時中、マグリットは明るい絵画を制作しました。

1943~1947年の間に、ルノワールのような明朗な作品が現れたのです。

 

とはいえここはマグリット。

こんな作品も描いているところが、マグリットらしいですね。

 

1945年
幸運

 

しかしこの明るいルノワール調の作品は、仲間のシュルレアリストに酷評されました

そして酷評されたマグリットも黙っていませんでした。

 

シュルレアリスト内に戦が起こります。

 

マグリットの怒りが頂点に達したのは、1947年のシュルレアリスム国際展への出店を拒否された事件。

納得ならないマグリットは、たった5週間で40点ほどの油彩画やガッシュ画を制作し、猛烈に抗議したのです。

 

1943年
ストロピア

 

毒々しいほどに荒っぽい画風が、怒るマグリットを象徴していますね。

 

 

青空と白雲が戻ってきた晩年

 

晩年、マグリットの画風は落ち着きを取り戻します。

1930年代、マグリットが30代だった頃の画風を再開させるのです。

 

1954年
光の帝国

 

この転換の理由もまた、愛妻ジョルジェットにありました。

マグリットは友人に宛てた手紙の中でこう書いています。

 

引用

ジョルジェットは“昔の”ように丁寧に仕上げた絵の方が好きなのです。

だから、何よりもジョルジェットの気に入るように、この先は昔のような絵を展示することにしたいと思います。

(『もっと知りたいマグリット』より引用)

 

もちろんただ単純に昔の作品を再生産したわけではありませんが、あのやけに明るいルノワール調や、荒々しいガッシュ画は姿を消しました。

 

1953年
ゴルコンダ

 

1967年、マグリットは68歳で生涯を閉じました。

 

 

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作品鑑賞のポイント

 

そもそもシュルレアリスムとは?

 

マグリットは、特に若い頃、シュルレアリスムに傾倒しました。

では、シュルレアリスムとは何でしょうか。

 

シュルレアリスムを日本語訳にすると「超現実主義」となります。

非現実的な光景を描くことで、現実世界を超越したものをカンバス上で表現しようとしたのです。

 

シュルレアリスムのはじまりは1924年に刊行された、フランスの詩人アンドレ・ブルトン(1896~1966年)の『シュルレアリスム宣言』という著作です。

絵画だけでなく芸術一般に広く、意識的なことよりも無意識的なことを重視しようと宣言したのです。

 

合理的だとか科学的だとか、もっともらしい理屈のある世界ではない

偶然や夢などの無意識的な世界に踏み込もう!

 

ひとことで表すのは難しいのですが、これがシュルレアリスム宣言です。

 

シュルレアリスムの画家たちは、無意識的な世界を描くために、様々な手法を用いました。

絵の具を付けた紙を紙でこすって色を付け、作品にしてしまう。

こんな試みもされたのです。

デカルコマニーと呼ばれる技法です。)

 

 

マグリットが多用したディペイズマンとは?

 

マグリット作品にとって、ディペイズマンという用語は欠かせません。

ディペイズマンとは、シュルレアリスムの表現技法のひとつです。

日本語では「配置転換」と訳されます。

 

唐突に不自然にモティーフが置かれることで、鑑賞者に違和感を与えるのがこのディペイズマン。

 

1962年
美しい世界

 

この違和感がディペイズマンで目指したところです。

 

ディペイズマンを用いられた作品では、ある文脈からモノを切り取って、別の場所にポンと貼ってしまう感覚があり、コラージュに通じるところがありますね。

 

 

実物とイメージと名前の関係性に疑問をいだいてしまった

 

特に1927~1930年頃、マグリットは「モノ」と「コトバ」と「イメージ」の関係性に興味を持っていました。

 

たとえばこちらの作品。

 

1929年
イメージの裏切り(これはパイプではない)

 

モティーフは、パイプです、よね?

ですがパイプの下にはフランス語でこう記されています。

 

「これはパイプではない」

 

いや!パイプでしょ!

と言いたいのはやまやまですが、マグリットの意図はこうです。

 

描かれているのはパイプですね。

ですが当然、この描かれている「パイプ」はあくまでも「画像」であって、パイプではありませんよね。

そしてまた、「パイプ」が「パイプ」という名前で呼ばれる必然性なんてのもありませんよね。

たまたま「パイプ」と呼ばれてしまったから「パイプ」という名前になっただけで、何かがちょっと違っただけで「パイプ」は「パピプペポ」という名前だったかもしれませんよね。

 

つまり、パイプを題材にして

実物とイメージってつながっているよね。

実物と名前ってつながっているよね。

でもそのつながりって、すごく強そうだけど、でもよく考えると脆くないかな?

と問題を提起したのです。

 

 

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まとめ 練り込まれた絵画世界に考えを深めるべし

 

マグリット、いかがでしょう。

ドラマティックな生涯や多様な作品、奥深さが面白く感じていただけたら幸いです。

 

なお、参考文献としてこちらの書籍を謝意をもってご紹介します。

 

 

マグリットに興味がわいたらぜひお手に取ってみてくださいませ。

 

以上、最後までお付き合いいただきありがとうございました♪

 

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