企画展

超おすすめ!現代版画の可能性展レビュー 浮世絵を超えて未来に向かう木版画の新しいあり方

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2018年度は茅ヶ崎市美術館が開館して20年になる節目の年です。

木版画の作品を比較的多く所蔵する茅ヶ崎市美術館。

20周年を記念し、「版の美」と題し4回に分けて企画展を開いています。

 

この記事は、「版の美」シリーズの第3弾となる「現代版画の可能性展」のレビューです。

浮世絵などの伝統版画を超えて、未来に向かう版画の力を感じられる、夢ある企画展についてご紹介します。

木版画が好きならば絶対行っておきたいおすすめの企画展ですよ!

 

 

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展示構成

 

まずは展示の構成を簡単に見てみましょう。

 

★ 馬渕録太郎(まぶち ろくたろう)の小口木版画作品5点

★ 恐怖の年賀状交換会「榛(はん)の会」の年賀状約240点

★ 線を重視した伝統木版から、面の木版にした馬渕聖(まぶち とおる)

★ 西洋画と日本画のモチーフを採用した柄澤斎(からさわ ひとし)

★ 摺りを追求している小野耕石

 

伝統木版画に縛られない新しい木版画が今まさに生まれてきている!

そんな臨場感が感じられる展示構成になっています。

 

 

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ここが見どころ!

 

小口木版画家・馬渕録太郎の愛らしい作品

 

はじまりは、馬渕録太郎(1890~1992年)の小口木版作品5点。

 

小口木版とは、主に西洋で発達した木版画です。

木の幹をイメージして、縦に切るのではなく、横に切って版木をつくるのが小口木版。

切った面には年輪のわっかがグルグルと見えます

 

幹を輪切りにした版木は非常に硬く、彫には熟練の技が必要です。

ですが、硬いため細かい表現が可能です。

 

馬渕録太郎は、まさに小口木版の硬さを生かした作品を制作しました。

 

彫師として生計を立てる一方で、創作活動も目指した馬渕録太郎の技術はものすごくハイレベル。

はじめに展示されている5点、特に石仏の作品4点は、どれもほほえんでしまうような愛らしさがあります。

しかし、微笑みをさそう作品の裏には、極めて高い熟練の技術が隠されているのです。

 

 

恐怖の大規模年賀状交換会 榛の会

 

榛(はん)の会とは、1935年から20年ほど活動していた、年賀状の交換を目的としたグループです。

 

161名が所属し、毎年50名前後が参加したこの企画。

実は、なんとも恐ろしいシステムのもとで運営されていました。

 

50名前後が年賀状を交換し合うわけですが、交換した後、恐怖の投票があります。

もらって嬉しかったか、嬉しくなかったか。

この極めて単純で残酷な基準で投票が行われる、だけならばまだよいのですが、不評であれば翌年は参加させてくれないのですから恐ろしい!

ぞっとしますよね。

 

そんな選りすぐりの作家たちの作品が240点も並べられているので、この展示室は圧巻のひとことです。

 

どの年賀状にも、受け取ってくれる人が嬉しくなるように、という愛情が込められているように感じました。

もちろん審査に落ちないように、ということも意識にはあったかもしれません。

ですが、心の底から、嬉しく思ってほしい、と願いながら制作されたのには違いないのでしょう。

 

恐怖のシステムを忘れれば、微笑みながら拝見できた、すてきなコーナーでした。

 

 

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馬渕聖が生み出したどっしりした癒し系の木版画

 

先ほどご紹介した馬渕録太郎の長男、馬渕聖(1920~1994年)の作品が展示されています。

 

浮世絵など日本の伝統的な木版画は、が最重要な要素とされていました。

しかし馬渕聖は、線に縛られないで、で構成された版画を目指します。

 

ひとつの技法を例にします。

普通、木版画は、彫りますよね?

でも、あまり彫らずに細密な作品を作ってしまったのが馬渕聖です。

木の板の上に細かい木の破片を糊でくっつけて凹凸を作り、摺ったのです。

 

完成作品はスーラのような点描にも見えますし、モザイク画のようにも見えます。

 

この技法はひとつの例にすぎません。

普通に彫っている作品ももちろんあります。

 

セザンヌのようなどっしりとした構図を魅せる作品などは、ああ、新しいな、と感じられました。

ハニワをモチーフにした作品は、愛嬌のある表情が魅力的でした。

摺りの工程や、下絵と完成作品の比較などもされていて、とても勉強になりました。

 

木版画を素直に楽しめる、面白いコーナーでした。

 

 

小野耕石が追う「摺り」という行為

 

版画は、摺りますよね。

 

この当たり前からはじまるのが小野耕石(1979年~)です。

 

摺りとはつまり、転写する素材の上にインクを乗せる行為と言えます。

 

小野耕石は、この「摺り」という行為を徹底的に追究しています。

 

作品は、一見すると、どうやって作ったのか、そもそも版画なのかすら、分かりません。

紙?の上に細かい柱?が無数に立っていて、その上に絵の具?を乗せた?のかな?と考えるのが精いっぱい。

 

ですが、この作品の正体を知ると、恐怖におののきます。

 

なんと、細かい柱に見えたのは、何百も摺重ねた末にできた絵の具の層だったのです……

素材の上にインクを乗せるのが摺りであるとしたら、摺りを重ねたら目に見えるくらい立体的になるのではないか

 

言われてみればそう、なのですが、まさかここまでやるとは……

呆然と眺めるしかありませんでした。

 

作品はまだまだ精力的に制作中とのことなので、この先が楽しみ、なような、恐ろしい、ような……

ともかく期待の版画家です。

 

 

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まとめ 版画の可能性という夢を形にして見せてくれた、目からうろこの企画展でした

 

浮世絵などの伝統的な木版画ももちろん素晴らしい版画の姿です。

ですが、伝統を超えた現代には、こんなにも豊かな世界が広がっているのだと知ることができました。

 

この企画展は、豊かな夢のある芸術的世界を確かに見せてくれました

 

まだまだ木版画にはやれることがある。

そう、信じられる。

 

そんな企画展でした。

 

 

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展覧会概要

 

最後に企画展の概要をご紹介します。

 

開館20周年記念 版の美Ⅲ 板にのせられたメッセージ

現代版画の可能性

 

茅ヶ崎市美術館

(JR茅ヶ崎駅から徒歩8分)

 

2018年12月9日~2019年2月3日

月曜日休館

開館時間10~17時

 

観覧料 一般200円

 

公式ホームページ http://www.chigasaki-museum.jp/exhi/20181209-20190203/

 

 

以上、最後までお付き合いいただきありがとうございました♪

 

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