美術史知識

村上隆『芸術起業論』 生業とするための覚悟と社会との向き合い方

投稿日:

 

芸術家・村上隆の著書『芸術起業論』を読みました。

 

アツい!アツかった!

もっと早く読みたかったなあという後悔と、読めてよかったなあという嬉しさを感じました。

 

村上隆が身を置いている芸術世界の話ではあります。

ですが「人生を賭けてなにかを追求する」ことの本質が書かれているので、他のジャンルにも通じるところがあります。

以下、何度も読みたいスルメ本の読書録です。

 

created by Rinker
¥583 (2019/08/19 22:35:53時点 Amazon調べ-詳細)

 

 

スポンサーリンク

『芸術起業論』概要

 

芸術起業論の本文は、第一章から第四章とあとがきで構成されています。

本当にざっくりとですが、どのようなことが書かれているのかをはじめにご紹介します。

 

第一章

まずは芸術活動にはお金が要る理由から始まり、現代の芸術家が相手にするマーケットやお客様はどんな特徴を持っているのかを解説し、どうしたら業界で生き残れるかに至ります。

 

第二章

芸術の役割や歴史を踏まえながら、日本の芸術の現状や世界へ出るために必要な要素が書かれています。

歴史を振り返ることで、今の立ち位置がよく分かるようになりました。

 

第三章

村上隆自身の経験を語りながら、価値ある芸術作品を創るためにどうすればよいかを、かなり具体的に解説しています。

個人的には一番心に刺さる内容でした。

 

第四章

村上隆が実践しているアーティスト育成法を例に出しながら、芸術家として伸びていくために必要なことを解説しています。

結構ストイックな精神論も多いので賛否両論ありそうですが、村上隆の芸術への愛がビシビシと伝わってきました。

 

 

スポンサーリンク

響いたところ

 

芸術起業論が心に響いたところはたくさんありますが、ここでは3つのポイントに絞ってみます。

 

ポイント

「自由にやれ」という呪縛

「かわいい」も芸術

「表現の世界に運命を賭けたんでしょう?」

 

 

「自由にやれ」という呪縛

 

芸術起業論の柱のひとつです。

今の日本の芸術家の卵は「自由に制作しなさい」と言われるけれど、観賞者のことも考えずに自分勝手に作品を広げては伝わらない、と村上隆は言います。

 

小さな個人のドラマが抽象絵画にのせられたら、誰も理解してくれません。

『芸術起業論』第三章より引用

 

とバッサリ。

この例えはグサッと心に突き刺さりますが、分かりやすいですよね。

 

本屋のビジネス書コーナーには、伝わる文章の書き方やプレゼンの仕方などの本があふれています。

どうしたら主張が伝わって自分の思う方向へ人の心を動かせるのか。

多くの分野ではものすごく重要とされていることですが、芸術の世界では確かに疎かにされていると思います。

 

どうすれば伝わるのか。

この永遠の命題が芸術分野で必要だと主張したこと、そしてその方法を具体的に示してくれたことが、芸術起業論の新しく優しいところです。

 

 

「かわいい」も芸術

 

芸術には、荘厳で敬虔なものだけでなく、かわいくほほ笑んで楽しむものもあるはずです。

『芸術起業論』第三章より引用

 

子どもの頃、好きなアニメのキャラクターを真似して描いていると、かわいいね、とほほえんでくれた大人がそばにいました。

ですが、年を重ねるにつれて批判されるようになりました。

理由は、ただの真似だったからではなく、かわいいものを描き続けたからです。

いつしか、かわいいものは幼稚で恥ずかしいという価値観が自分の中で作られていました。

 

かわいいものは低俗である。

そんな「思い込み」を、村上隆はこの本でぶち壊してくれました。

 

かわいいも芸術になれるんだ!という発見は本当に嬉しかった。

もちろん、芸術になるためには厳しい道があるのですが、でも道があると言ってくれただけでも私にとっては救いになったのです。

 

 

他に何もいらないほどの幸福感

 

表現の世界に運命を賭けたんでしょう?

まぶしい光を一回でも見たんだったら、もう他のものなんて何もいらないぐらい幸福なのではないのでしょうか。

『芸術起業論』第四章より引用

 

村上隆の芸術活動や若手の育成方法は、かなり苛烈です。

よい作品を創るために地獄を見る手法をとっています。

具体的な記述を読むとけっこうゾッとします。

逃げ出す人もいると書いてありますが、それはそうだ、と思います。

 

でも、それでも村上隆は、苛烈な芸術活動の先にあるものが幸福だと言い切るのです。

それほどまでの幸福感が生涯の中で一度でも味わえる人ってどれくらいいるのでしょう。

全てを投げ打ってでも没入したいことがあるのは、うらやましいような恐ろしいような……

 

 

スポンサーリンク

まとめ 覚悟と、愛

 

『芸術起業論』から伝わってきたのは、芸術に向き合う覚悟と、他の何よりもどうしようもないくらい芸術が好きだという愛でした。

具体的な手法が役に立つのはもちろんですが、気力の湧いてくる本でもありました。

時々読み返したいと思います。

 

以上、最後までお付き合いいただきありがとうございました♪

created by Rinker
¥583 (2019/08/19 22:35:53時点 Amazon調べ-詳細)

記事の更新情報をTwitterでお知らせしています

-美術史知識

Copyright© ぷらりあーと , 2019 All Rights Reserved Powered by AFFINGER5.