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ブリューゲル ツッコミどころ満載の奇怪な作品群を図版たっぷりでご紹介します

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ピーテル・ブリューゲル(1530頃~1569年)は、フランドル(現在のベルギーあたり)で活動した画家です。

人間も怪物もこれでもか!というくらい詰め込まれた作品、主役がどこにいるか分からないほぼ風景画、などが有名でしょう。

バベルの塔も代表作としてよく知られていますね。

 

美術史上欠かせない人物、ブリューゲル。

実は、ブリューゲル自身については記録にほとんど残っておらず、謎の多い人物なのです。

 

この記事では、謎多き画家・ブリューゲルとその作品をご紹介します。

賑やかな画面に詰め込まれた面白さをぜひ味わっていただきたいと思います。

 

この記事でのブリューゲルはピーテル・ブリューゲル(1世)とします

ブリューゲルの子孫は画家が多かったので、ブリューゲルの名を持つ画家はたくさんいます

 

 

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代表作品

 

まずはブリューゲルの代表作を6点見てみましょう。

ユーモラスという言葉では足りないくらい面白さにあふれた作品たちにご注目を!

 

1568年
バベルの塔
(ボイマンス・ファン・プーニンゲン美術館 蔵)

 

1561年
悪女フリート

 

1559年
ネーデルラントの諺

 

1556年
聖アントニウスの誘惑

 

1568年頃
農民の結婚式

 

1562年頃
死の勝利

 

 

いかがでしょう。

なんとも賑やかで面白いですね。

 

 

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人物概略

 

では、代表作を見ていただいたので、人物概略に入りましょう。

とはいえ、ブリューゲルの人物像を知るのは簡単な事ではありません。

記録があまりにも少ないのです。

 

 

記録が欠落した謎の人物

 

『ブリューゲルとネーデルラント絵画の変革者たち』では、ブリューゲルを

 

一行の文章も残さなかった画家

 

と表現しています。

 

 

 

ブリューゲルによる文章は、手紙も日記も一切なにも残っていません

そのため人物像はよく分かっていません。

 

唯一、同時代の記録として残っているのがカーレル・ファン・マンデル『北方画家列伝』

ブリューゲルの概略が記録された貴重な史料です。

 

 

『北方画家列伝」の記述

 

貴重な史料ではあるものの、『北方画家列伝』の記録もあくまでも概略にすぎません。

 

ブレダという町のあたりで生まれた

ピーテル・クック・ファン・アールストに師事した

版画商ヒエロニムス・コックのもとで働いた

イタリアに旅行した

結婚した

1551年にブリュッセルに移住した

 

この程度なのです。

あとは、作品から読み解くしかありません。

 

1557年
大きな魚は小さな魚を食う

 

 

作品点数も多くはない

 

文字史料が少ないブリューゲル。

実は作品点数も決して多いわけではありません

油彩画に限ってしまうと約40点にも絞られてしまいます。

 

あまりにも少ない史料と作品。

450年後の現代までその名が知られているのが奇跡のようですが、作品を見れば納得できます。

ブリューゲルの独特の世界観は、注目せずにはいられないからです。

 

 

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作品のポイント

 

人物像が分からないことが分かりましたので、心新たにじっくりと作品を見てみましょう。

ここでは4つのポイントに着目します。

 

 

人間と怪物がぎっちり

 

ブリューゲルの作品にはモティーフが思い切り詰め込まれているものが多くあります。

 

1562年頃
死の勝利

 

全ての作品がこのような密集型なわけではありませんが、にぎやかさはブリューゲルの作品の大きな特徴のひとつです。

密集という特徴は、主人公を埋没させ、画題をあいまいにし、風景画化させる効果を持ちました。

 

 

風景画化した宗教画

 

人物や怪物が密集することでなにが起こるか。

それは主人公の埋没宗教画・寓意画・神話画の風景画化です。

 

 

たとえば「十字架を運ぶキリスト」

 

1564年
十字架を運ぶキリスト

 

キリストがウォーリー状態で、どこにいるのか探さなければ見つかりません

 

いました、真ん中で苦悶していますね。

 

 

 

 

「イカロスの墜落」も、肝心のイカロスがどこにいるのかパッと分かりますか?

これは難しいですよ。

「イカロスの墜落」はブリューゲルの真作か疑問視する意見もあります

 

イカロスの墜落

 

実は右下の脚がイカロス。

 

 

ほとんど海に沈んで見えません。

 

これが主人公、なのか……

 

 

「普通の」宗教画では、聖人の特別感や、あからさまな「この人が主人公です!」アピールがありますよね。

同じくフランドルの、細密描写で知られるヤン・ファン・エイク「宰相ロランの聖母」

 

ヤン・ファン・エイク
宰相ロランの聖母
1434年頃

 

威厳あるたたずまいの赤ん坊は明らかにイエスですよね。

 

 

でも、ブリューゲル作品にはその分かりやすさがありません。

風景画と言ってもよいくらい宗教色は薄まっています

 

 

農民たちの日常生活

 

ブリューゲルは「農民画家」「民衆文化の画家」と言われます。

キリスト教の場面を描いた作品もありますが、歴史に名の残らない農民たちの日常を描いた作品も多いのです。

 

 

たとえば「ネーデルラントの諺(ことわざ)」

 

1559年
ネーデルラントの諺

 

100以上もの諺が画面上で表現されています。

 

 

悪魔をクッションの上で縛る

=強い妻

 

 

大きな魚は小さな魚を食う

=強いものが弱いものから巻き上げる

 

 

パンからパンに手が届かない

=今日のパンは買えても明日の分は分からない貧困状態

 

 

猫の首に鈴をつける

=困難な課題に挑む

 

当時のネーデルラントでは、諺集や格言集がベストセラーになったくらい一般民衆の間に諺が広まっていました。

諺という画題の選択、画面で生き生きと描かれた一般民衆の姿は、「民衆文化の画家」の名に違わないものです。

 

とはいえ、ブリューゲルは民衆の代表者なんだ!と言い切るのも難しいところ。

ブリューゲル作品の注文主には支配階級の人も少なくありませんでした。

 

なんとも複雑で分かりにくい。

こんなところもブリューゲルらしいですね。

 

 

バベルの塔

 

さて、バベルの塔

ブリューゲル作品の目玉です。

 

バベルの塔は、旧約聖書「創世記11章」で語られます。

ざっくりとまとめると、人類が天へ高く塔を建設しはじめたので、神が脅威を感じて壊してしまった、という内容です。

深堀すればいくらでも考察できるエピソードですが、とりあえずこれくらいで留めておきましょう。

 

ブリューゲルは「バベルの塔」を2点描いています。

ひとつは現在ウィーン美術史美術館に所蔵されている、1563年の作品。

 

1563年
バベルの塔
(ウィーン美術史美術館 蔵)

 

 

もうひとつはロッテルダムのボイマンス・ファン・プーニンゲン美術館に所蔵されている1568年頃の作品。

 

1568年
バベルの塔
(ボイマンス・ファン・プーニンゲン美術館 蔵)

 

ウィーンの方が114×155cmなのに対し、ロッテルダムの方は59.9×74.6cm。

倍くらいの大きさの違いがあります。

 

緻密な描写と迫力ある構図。

脱帽ですね。

 

 

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まとめ 奇怪で独特の世界は鑑賞者を飽きさせない

 

ブリューゲルは資料も作品もあまり多く残っていない画家です。

それでも美術史上欠かせない人物として、約450年が経った現代でも広く知られています。

その理由は、シンプルに、作品の魅力にある、と言えるでしょう。

 

 

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ブリューゲルの解説書は、一般向けだと2冊あります。

私が特におすすめしたいのがこちら。

 

 

安定の東京美術発行です。

 

 

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以上、最後までお付き合いいただきありがとうございました♪

 

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